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東京家庭裁判所 昭和48年(家)9801号 審判 1973年10月03日

国籍 アメリカ合衆国カリフォルニア州

申立人 トーマス・エム・ハバード(仮名)

本籍 福岡県

同 小林安子(仮名)

国籍 アメリカ合衆国カリフォルニア州

事件本人 マイケル・エル・ハバード(仮名)

主文

事件本人マイケル・エル・ハバードの後見人として申立人両名を選任する。

理由

本件申立と申立の実情は「申立人らは昭和四〇年一一月二六日婚姻した夫婦であり、事件本人は申立人らの間に出生した子であるところ、事件本人は一九七二年二月一九日アメリカ合衆国ハワイ州において交通事故に遭い、保険金社に約四〇〇〇ドルの保険金を請求し、これを受領する必要があるので、事件本人のため後見人の選任を求める。」というのである。

申立の実情たる事実は、申立人小林安子の戸籍謄本、ミルトン・チョイ弁護士の申立人らに対する書簡(一九七三年八月一〇日付)、事件本人の出生証明書および申立人ら審問の結果を総合してこれを認めることができる。

本件は渉外事件であるが、申立人両名および事件本人はいずれも東京都内に住所を有していることが認められるから、日本国裁判所が本件について裁判権を有し、かつ東京家庭裁判所が管轄権を有する。

本件の準拠法は法例第二三条により事件本人の本国法たるアメリカ合衆国カルフォルニア州法である。カルフォルニア州検認法(Probate Code) によると、一般に両親は、子たる未成年者に対し身上後見人(gu-ardian of person) として同等の権限を有し、共同で監護養育を行うのであるが、二五〇〇ドルを超える財産については親は未成年者に代つてこれを管理処分することができず(一四三〇条)、そのため検認裁判所は、その財産の管理処分について財産後見人(guardian of estate) を選任しなければならない。この場合、検認裁判所は未成年者の最善の利益を考慮して後見人を選任すべく(一四〇六条)、後見人は複数であつてもよく(一四〇五条)、親を第一順位とする(一四〇七条)。同法において身上後見人である親が子の財産の管理処分を行うことができないのは、子の財産の保護は裁判所により選任され監督される財産後見人によつて行わなければならないとされているからである。

そうすると未成年者たる事件本人の本件保険金請求および受領については財産後見人の選任を要するものといわなければならない。日本国民法では、このような場合に後見人の選任を要しないものとし、家事審判法にもそのような規定はない。しかしながら、他国の実体法が準拠法となる場合に、自国の実体法との相違により裁判所がこれを実現適用する手続上の規定を有しないときには、これと類似する手続上の規定によつて右他国の実体法を適用実現すべきである。

よつて当裁判所は申立人両名を事件本人マイケル・エル・ハバードの後見人に選任することを相当と認め、主文のとおり審判する。

(家事審判官 田中恒朗)

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